2023年5月10日
令和5年3月23日に認定されたトップアスリート発掘・育成事業の第14期生28名に対する「育成プログラム」が始まりました。
育成プログラムは、自ら選択した競技(ローイング(ボート)、ボクシング、レスリング、ウエイトリフティング、自転車、カヌー、アーチェリー)に必要な技術だけでなく、人格的に優れたトップアスリートになるための知識や能力、技術を身に付けることを目的として実施するもので、スポーツ科学だけでなく、アスリートが知っておくべき栄養学に至るまで、様々なプログラムが用意されています。
このたび、プログラムのスタートとなる宿泊研修が実施されましたので、活動の様子をご紹介します。
講師 仙台大学 粟木 一博 教授
この「スポーツ教育プログラム」は、トップアスリートを目指すために必要となる自己教育力(自ら考え、競技力を向上させる力)を育むためのカリキュラムで、「コミュニケーションスキル」、「自己分析」、「メンタルトレーニング」、「スポーツ栄養学」等について1年を通じて受講するものです。宿泊研修1日目の初回となる本講義では、様々なゲームを通じて、世界を目指すアスリートに必要なことについて話し合いました。
3回のじゃんけんを行う中で、選手が何を考えていたかを話し合いました。何かを実行するときには、相手の行動や表情など、周囲の情報をもとに考える「判断」と、勇気をもって行動に移す「決断」が必要であることを知りました。
「人は何かを考えないように意識すればするほど、その何かが頭から離れなくなってしまう」という思考の癖について説明し、考えを整理する重要性を学びました。
コミュニケーションとはもともと「共有」を意味し、自分自身でも自分のことについて知らないことがたくさんあるため、コミュニケーションを通じて自分のことを共有することで、自分についてより深く知る必要があることを学びました。
コーチという言葉にはもともと「引っ張る」という意味があり、対象を目的地まで導くことを意味しているそうです。また、コーチというのは自分自身の中にも持つべきであり、常に自分自身に問いかけを行い、これをコミュニケーションなどでアウトプットすることで自身の考えを整理し、判断および決断をしていく必要があるとのお話がありました。
講師との対話やコミュニケーションゲームを通じて、わいわいとした雰囲気の中で楽しみながら、時には真剣な姿勢で取り組んでいました。
講義を受講する第14期生
コミュニケーションゲームの様子
講師 東京アスレティックトレーナー競技会 石郷岡 旭
引き続き、年間を通じて計画的にトレーニングを実施する心得について、アスレティックトレーナーの先生から話がありました。
トレーニングの主な目的は「競技力(パフォーマンス)向上」と「怪我の予防」であるとし、自分の身体の特徴を踏まえた(強みを生かす、弱みをつぶす)トレーニングと自分の競技の特性を踏まえたトレーニングを行う必要があることを説明しました。プログラムに沿ってトレーニングを続けていけば、12月に実施する体力測定にてその効果が実感できるとのことでした。また、各競技に必要な能力についても理解を深めました。
選手によって筋力量が異なるため、みんなが同じトレーニングをすればよいわけではなく、また、簡単にできる回数・重量のトレーニングを同じ内容で続けても強くはなれないとのことでした。
筋肉は超回復と呼ばれる破壊と再生を繰り返すことで強化されるため、連続で同じ部位に負荷をかけるのはよくなく、また、部位を変えながらトレーニングを行うのであれば、毎日トレーニングを行っても問題がないとのお話でした。ただし、成長段階にある選手においては、週に一度は何もしない日を設け、十分な休息をとることも重要であるとのことでした。
競技を実施していくにあたり、トレーニング、睡眠、食事及び生活習慣などを意識し、計画的にバランスよく鍛えることが重要であるとのことでした。
翌日からのトレーニングプログラムのことを考えながら真剣にメモを取り、一層気が引き締まったような表情をしていました。
講義を受講する第14期生
競技の特性について議論している様子
宿泊研修2日目は、アスレティックトレーナーの先生方によるトレーニングプログラムが実施され、選手たちにとっては、前日に受講した「トレーニングの理論」を実践する場となりました。肩回りの広背筋、大腿四頭筋、ハムストリングス、大臀筋の柔軟性の測定を実施しました。測定動作を通じて、選手たちは、自身の身体の強みと弱みを把握し、今後自分がどんなトレーニングをしていかなければならないのかを実感していました。
トレーナーの話を聞く選手たち
ハムストリングスの柔軟性測定の様子
トレーニングプログラム後半では、立ち幅跳び、片足スクワット、プランク、腕立て伏せと身体を大きく動かす測定を実施しましたが、トレーナーの先生方からトップアスリートになるためには、まだまだ意識を変えていく必要があると諭されていました。測定では、男子が立ち幅跳びでダイナミックなジャンプを見せる一方で、女子選手は苦戦する様子が目立ちました。
立ち幅跳びをする選手
片足スクワットに取り組む選手
選手たちは、今回の宿泊研修を通じて、同じ志を持つ新たな仲間と切磋琢磨していく必要があることを学ぶと同時に、自己管理の大切さを認識したようでした。これから12月まで実施されるトレーニングプログラムを経て、どのように成長していくのか楽しみです。
※次回からは第14期生が自ら選択する競技(ボート、ボクシング、レスリング、ウエイトリフティング、自転車、カヌー、アーチェリー)に必要となる技術を実践的に学ぶ「競技別プログラム」での活動の様子について紹介していきます。お楽しみに!
東京都 生活文化スポーツ局
スポーツ総合推進部 スポーツ課 競技力向上担当
電話 03-5320-7715