「東京パラスポーツスタッフ交流会」レポート
~ 選手とより良い関係を構築し、選手の更なるパフォーマンス向上につなげよう! ~

橋口 泰一さんの写真
ファシリテーター 橋口 泰一 氏
(公財)日本障がい者スポーツ協会科学委員会委員
日本パラリンピック委員会強化委員会委員
日本大学松戸歯学部(教養系健康スポーツ科学)准教授
日本スポーツ協会コーチディベロッパー(コーチ育成者)

令和3年2月13日(土)
東京パラスポーツスタッフオンライン交流会を実施しました!!

 先般、橋口 泰一氏をファシリテーターに迎え、10名の東京パラスポーツスタッフの皆さんとともに、競技の枠を超えてグループワーク、ミニレクチャーを通して意見交換をしていただきました。
 当日の様子をお届けしますので、是非ご一読ください。
 オンライン交流会の冒頭では、参加の皆様のご協力のもと、ファシリテーターの橋口様の明るいキャラクターによる進行で「最近1週間で幸せだったこと」を含めた自己紹介により、なごやかな雰囲気で始まりました。

オンライン交流会の進め方

■ランダムにメンバーを入れ替えて、グループワーク形式(ワールドカフェ方式)により実施
■第一部オンライン講座(映像教材)で提示された内容(質問の仕方等)の実践の場に
■ミニレクチャー「アウトカムについて」

交流会の目的

■オンライン講座で得た情報を、グループワークを通して共有してみる。
■個々の競技環境や工夫を聞いてみる
■答えを見つける時間ではなく、この後のコーチの成長に向けてのきっかけ作りにしてほしい

交流会のココロエ(心得)

■心理的安全 守秘義務を守って他者の意見を受け入れよう
■積極的に参加しよう

【テーマ①~③】とグループ討議内容

第1ラウンド「オンライン講座の感想と自身の競技現場での現場」

  • 選手のモチベーションUPに今以上にかかわっていきたい
  • 社会、人生に活かせる内容だった
  • コロナ禍において、自分自身の体調管理というのをものすごく気にするようになった
  • 全く選手との対面でのコミュニケーションが取れず、すごく不安ではある
  • 選手の皆さんのモチベーションをいかに保つのか、コミュニケーションをどうやって取っていくのかというところ、社会、人生に生かせるような内容だった
  • コミュニケーションを、より綿密にしていく必要がある
  • 自分をまずしっかりコントロールできる力を身に付けるというところでは少し、セルフコーチングというところの回は参考になった部分があった
  • コミュニケーションの話で、共通点を探す、自分から心を開くというのが印象に残った
  • コミュニケーション、まずはボランティアの人同士の交流がきちんとできないといけないなというのをすごく思っていて、講座を通してどういう段階を踏めばいいのかというのがすごく分かった
  • 相手を知る、コミュニケーションを取るということを、どういうふうに知的障害者に当てはめればいいのかなというのがちょっと難しかった

第2ラウンド「選手育成と強化における競技現場での現状」

  • 団体合宿は全て中止になっているため、個人で近くの道場なり学校なりで間借りをして、競技に向けての練習を行っているというのが現状である
  • オンラインでトレーニング指導を行っているが、大会の延期もあって、やや進行がストップしているといったような感じである
  • 対面が非常に難しいので、特に作戦面に関してはAIを取り入れつつ、トレーニングをしつつ、集まった時には万全の状態でというところが今、最善なのかなと思って取り組んでいる
  • 月1回、どういう課題で取り組んだかを必ず書面で提出、また動画を撮ってもらうかたちで、懸垂とジャンピングスクワットは毎月1回、必ず提出するかたちでやっている

第3ラウンド「コロナ禍での新たな取り組み課題について」

  • 何人も入れるスペースではないので、私と選手でこもってとにかく練習を。もう基本的な練習しかできませんが、やっている
  • コロナ禍において健康への意識がとても上がり、選手も私も相互に勉強し、知識を持ち寄ってということをするようになった
  • レーンごとに人数制限し、それ以上は入れないというような形をとって練習はしている

第4ラウンド「まとめ」「各グループ発表」

  • それぞれの競技特性や対象者によっていろいろな工夫をしなければいけないなというふうなところを、話し合えた。まだ解決できない課題も多々あるが、その中で、今回、いろいろな意見を聞けて非常に参考になったし、今後、いろんな団体での取り組みにつながっていければなと思った
  • アスリートと一番近くで関わる指導者やアシスタントなんかも不安を持っていて、選手の負けが込んでくると、こっちも気持ちの面でなかなか落ち着かなかったりするようなところがあったりだとか、そういう選手の不安をいかに取り除けるかみたいなところの意見交換をさせていただいた
  • 印象的だったのが、選手同士もなかなか対面で会う機会が少なくなっているけれども、久しぶりに会った時には、「おお、久しぶり」というふうに、皆さん交流されているという話を聞いて、やっぱり顔を合わせるということがすてきなことだし、大事なことだと感じた

橋口氏ミニレクチャー
「コーチ、サポートする上での『アウトカム』について」

 選手が主体的にトレーニングに取り組めるためのコーチングや環境の整備などについて、「アスリートセンタード・コーチング」という言葉があります。われわれコーチやサポートスタッフは、目的や期待される結果を選手や競技団体に提供することが仕事になります。その際、トレーニングの目的や目標などを明確にすることが重要です。この到達目標(アウトカム)を明確にするためのチェックとして、「LEARN-S」を確認してみてはいかがでしょうか。

良いアウトカムの設定とは

 「LEARN-S」は6つの項目のアルファベットの頭文字をとり名付けられています。コーチング場面において、トレーニングは学習者主体であるか、環境が整備されているか、能動的であるか。そして過去から振り返りを行い、常に新しい学びを提供し、居心地の良いところから、一歩踏み出すようなストレッチ(チャレンジ)できているかを確認してみましょう。このストレッチは、課題が難し過ぎても、簡単過ぎても効率が悪く、一歩踏み出せるところを挑戦してほしい部分となります。
本日の交流会では、様々な方の話を聞くことにより、「こうした練習をしている」、「こういう環境整備を工夫した」など、 多くの“出会い”や“気づき”があったと思います。

振り返りの紹介

 最後にご紹介した振り返り(「Good、Bad、Next」)から、トレーニングやコーチングの振り返りの際に、「上手くいったところは何だろう?(Good)」、「上手くいかなかった点や修正が必要なことところは?(Bad)」、そして、「次に何をするのか?(Next)」という、 「Good、Bad、Next」の順番で振り返り、次回のトレーニングや、コーチの成長へ繋げるために継続的に行ってみると良いと思います。
 一部参照:日本スポーツ協会・公認スポーツ指導者養成講習会資料

ミニレクチャーで出てきた言葉のまとめです。

◆アスリートセンタード・コーチング
アスリートを主体としたコーチングであり、コーチがやりたい練習や目標設定だけにならず、選手が主体的にトレーニングに取り組めるための環境整備やコーチングを実践する。

◆アウトカムの設定
アウトカムは、プレーヤー自身が理解・納得でき、進んで強化・改善に取組める練習内容を設定するのが必要。コーチやサポートスタッフは、選手が目的・目標を達成できるように導くことが求められる。

アウトカム・・・(選手等に示す)練習目的、期待される結果、出したい成果

※目標、目的が明確でない練習を繰り返しても成果につながらない。選手が練習の意図を理解できていることや、目的意識を持って主体的に練習できることが重要。

●チェックポイントを意識する。
良いアウトカムの設定として、
LEARN―S (L:学習者主体、E:環境、A:能動的、R:振り返り、N:新しい学びの提供、S:快適ゾーンから一歩チャレンジさせる)を意識し、一つ一つの項目に当たるか確認をし、選手に提供することが有益。

●グッドプラクティスに触れる(今回のような他業種・他領域の人との交流で、成功例を得て、自身の活動にいかす。)

●常に振り返りをする
振り返りのフレームは様々なものがある。今回は、「Good、Bad、Next」を用いたフレームを紹介する。
①よかったのは何か
②修正点として気づいたことは何か
③次回は何をするか
の3点を意識して振り返る。
今回のフレームは一例であり、自身の振り返りを行いやすいフレームや項目で実施することが大切。

編集後記

 ご参加いただいた皆様、お仕事や競技活動でご多忙のところご協力いただきましてありがとうございました。
 本事業主催の都及び東京都障害者スポーツ協会では、今後もパラスポーツ及びパラスポーツを支える方々の環境整備に取組んでまいりますので、皆様にはご理解、ご協力をお願いいたします。

東京都オリンピック・パラリンピック準備局 パラリンピック部
公益社団法人東京都障害者スポーツ協会