【プロフィール】
かきはら・やすはる 1970年12月30日生まれ 株式会社コーエーテクモホールディングス所属
2014年 長崎国体個人優勝
2018年 福井国体トラップ団体優勝
かきはら・けんせい 1972年10月25日生まれ 環境科学株式会社所属
2019年 茨城国体個人6位
2019年 全日本選手権5位
空中に放たれる” クレー” といわれる皿状の標的を狙い、撃ち落としていく「クレー射撃」。標的が動くので、瞬時の判断力と鋭い反射神経、そして高い集中力が求められます。クレー射撃の「トラップ」種目で活躍するのは、柿原康晴選手、柿原健晴選手のご兄弟。標的が出た瞬間を狙う、兄の康晴選手と、標的をじっくりと狙う、弟の健晴選手。
真逆のプレースタイルのお二人に、クレー射撃の魅力を伺いました。
弟・健晴選手
弟・健晴:最初に競技を始めたのは僕で、32歳の時でした。子供の頃、ゲームセンターの射撃ゲームが好きで、よくやっていました。こういうのが本当にできたらいいなと思っていましたが、周りに射撃をする人がいなかったので、実際にやるのは難しいだろうと思っていました。そんな時、テレビ番組で、一般の人でも免許が取れることが分かり、取得したのがきっかけです。
兄・康晴選手
兄・康晴:大学生の頃からハンティングがやりたくて、免許取得の教本を読んでみたら、平日に警察に行かなくてはいけませんでした。僕は医学生だったので、授業の関係で平日に行くことが難しく、1回諦めました。そんな時、弟が射撃をやっていると聞いて、始めたのがきっかけです。その後ハンティングもやりましたが、やっぱりクレー射撃の方が面白くなっていきましたね。
弟・健晴:やはり皿が割れたときの爽快感は格別ですね。僕達が行っている「トラップ」種目は、1つの皿に対して2発まで撃てます。芯に当たった時は粉々に皿が割れるのですが、キレイに割れても、当たりが悪くても、得点は1点です。でも、割れが悪かったり、タイミングがずれてくると、だんだんとペースが乱れてきます。さらに1発目で当たるのか、2発目で当たるのかも、大きく成績に影響してきます。そういった意味では自分との闘い、自らのメンタルと向き合うスポーツであるというところが魅力だと思いますね。
兄・康晴:撃つ前に10秒間くらい時間があって、張り詰めた「静」の状態から、コールした瞬間に大きな音と振動が起こる「動」の状態に一気に変わる、その展開の早さが魅力ですね。
あとは、皿を外した後の選手の挙動や、この選手はどういう心理状態で次を待っているのかと想像しながら競技をみるのも面白いかもしれません。
また、直接射撃場で観戦すると、音がすごい迫力です。耳栓が必要なくらい凄い音ですね。
兄・康晴:僕からみると弟は落ち着いている印象がありますね。僕と撃ち方は真逆。僕は皿が放たれたらすぐに撃つタイプですが、弟はじっくりと狙って撃つタイプです。
本来あの速さで飛んでくる皿を狙って撃つというのは、なかなか難しいので、凄いと思います。じっくりと狙えるということは、意識すればスピードを速めて撃つことも出来るということ。そうやって調整できる点は羨ましいですね。
弟・健晴:ゆっくり狙って撃つのが僕のスタイルですが、兄はコールした瞬間に撃つことが出来ます。僕が兄のように行うと、皿の出るスピードを追い越してしまいます。それが嫌でゆっくりやっていたのですが、先日、東京都主催のグローバル指導者育成事業でイタリアのナショナルコーチに教わる機会がありましたが、『お前は遅い、コールして撃つまで寝ているのか。兄貴が早いんだから、お前も縮めて撃て』と言われまして…(笑)。兄のように縮めて撃てるのは羨ましいと思っています。
メンタル面でいうと、兄のメンタルは強いですよ。兄は外科医で、手術になったら十何時間も集中するので、集中力は非常に高いですね。
兄・康晴:日本全国の射手に『お前、集中力だけは凄いな』と言われました(笑)。「静」の時にギュッと集中して、「動」で解放するというイメージです。集中して解放するという動作を25回繰り返して1ラウンド。それを4回行う競技種目なので、一時にぐっと集中するという感じです。
弟・健晴選手
弟・健晴:全日本選手権で初めて入賞した時が一番の思い出です。もともと出場する気はなかったのですが、兄に誘われて出場したら、3位に入賞することが出来ました。
当日は天気が悪く風も強かったのですが、悪天候だったことで試合全体がスローペースで進み、撃つのも準備をするのもゆっくりと行うタイプの自分にとって、それが好条件となり、本当にいい試合でした。
兄・康晴:僕は2つありますね。1つは11年前に出した100枚全部当てる(「100ストレート」と呼ばれる)という記録を達成した時です。その日は標的の皿がスローモーションに見えるほど、撃ったら当たるという感じでした。100ストレートを達成したと同時に、ゾーンに入ったという感覚を体感したことは今でも忘れられません。
もう1つは、長崎国体の試合で、最終ラウンドの接戦を勝ちきって優勝した時です。国体は何度も入賞ていましたが、優勝と入賞は全く違いましたね。
兄・康晴選手
弟・健晴:オリンピックに出られるチャンスがあれば、狙っていきたいです。射撃は90歳でも撃っている人がいますので、生涯継続できる競技だと思っています。体力と集中力が続く限りずっと続けていきたいです。
兄・康晴:僕は目指せオリンピック!先日、東京都主催の事業でイタリアのナショナルチームのコーチから教わる機会があり、いろいろと学ぶこともありました。それを糧にして、次のオリンピックを狙っていきたいと思います。誰がみても代表は自分だと思わせるような圧倒的な成績を残して、五輪代表を勝ち取りたいと思っています。
兄・康晴:選んで頂き光栄だと思っております。日本、さらに世界に通用するくらいの選手にならないといけないと思っています。
自分としては、凄い選手になりたいというよりも、気軽に『教えてください』と言っていただけるような選手になりたいですね。教えて欲しい方がいたら、いつでも教えますのでご連絡下さい(笑)。
弟・健晴:せっかく選んでいただいたからには、お手本となるような選手になりたいです。今後指導も出来るのであれば、初心者の方にも教えていきたいと思っています。
兄・康晴:大きな試合の前に必ず行っていた勝どきのお寿司屋さんがあります。そこで食べてゲン担ぎをしていました。
弟・健晴:競技中に着るベストの中に、亀岡八幡宮のお守りを入れています。うちの氏神様で、毎月1回はお参りに通っていますね。