【プロフィール】
古谷信玄
ふるや・しんげん 1989年1月9日生まれ 株式会社エス・ピー・ネットワーク所属
八山慎司
はちやま・しんじ 1987年5月15日生まれ 株式会社エス・ピー・ネットワーク所属
2018年 アジア競技大会優勝
2016年・2017年・2018年 全日本選手権優勝
様々なクラスがあるセーリングで、「49er(フォーティーナイナー)級」は、海のF1と言われ、五輪種目の中で最もスピードが出るクラスです。体格のいい選手に有利な種目で、日本人にはなかなか乗りこなせないクラスと言われています。その海外勢が強い49er級で戦うのは、古谷信玄選手と八山慎司選手。同じ高校の先輩・後輩コンビが世界に挑みます。
【大会情報】
11月29日~12月8日にニュージーランドで開催される49er級世界大会で東京2020大会日本代表選手が決まります!(大会情報はコチラ⇒大会スケジュール一覧)
古谷:父が昔からヨットをやっていたので、小さい時からずっと海にいるような生活を送っていました。小学3年生の時に父に勧められてヨットを始めましたが、最初は海に出るのがあまり楽しくなくて…。江の島ヨットハーバーが見えるとお腹が痛くなってトイレに必ずいっていました。
楽しいと感じるようになったのは、高校に入って結果が出始めた頃からだと思います。それまでは、海に行っても陸地でヨット仲間と遊んでいるほうが楽しかったです(笑)。
八山:もともと母の影響でアルペンスキーを始めました。小学校の時は、雪を求めて転校するほど、結構本格的にやっていましたね。でも、中学校では、部活でスキーをやっている選手に勝てなくなってきて、今後どうすべきかを悩むようになりました。
そんな時、父がヨットをやっていたこともあり、「お前の体格とバランス感覚ならヨットで世界を目指せるぞ」と声をかけてもらったのがきっかけで、高校からヨットを始めました。母から父へとバトンタッチという感じです(笑)。
八山:古谷選手は1つ年下ですが、中学生の時から既にスター選手で、入ってきた時は天狗…、いや、頼もしかったですよ(笑)。とにかく体格がいいなと思ったのが第一印象です。そして頭の回転が速い選手だなとも思っていました。
古谷:僕も八山選手の第一印象はでかいなですね。高校からヨットを始めたと聞いていましたが、只者ではない威圧感というかオーラが出ていました。この人には逆らえないなというか、ついていきたいというカリスマ性がありました(笑)。
八山:いやいや、高校から始めたので、最初はめちゃくちゃ下手でしたよ。古谷選手の方が上手くて、何回やっても勝てなかったです。でも、「お前の体格があれば世界を目指せるぞ」と言われていたこともあり、結構チヤホヤされていたかもしれません(笑)。
八山:リオデジャネイロ2016オリンピックまでは470級で出場を目指していましたが、東京2020大会が決まった時に、
49er級で勝負しようと決めました。49er級は体格が大きくないと乗れない種目ですし、センス的なものも必要。自分の中では、高校の時に一緒に乗ったことのある古谷選手が、人生の中で一番優秀なスキッパーだと思っていたので、一緒に組もうと声を掛けました。
古谷:自分もヨットでオリンピックに出たいという思いはずっと持っていました。でも、なかなかそのチャンスに恵まれなかったので、声をかけてもらった時は、すぐに一緒にやると決めました。
八山:49er級はセーリングの花形で、49er級でトップになると、セーリング全体のトップと言われるほどの種目です。スピードもあって、とにかくカッコいいですね。そういった種目への憧れもありましたが、自分のような体格のある選手に有利な競技ということも選んだ理由の一つです。日本ではトライする選手が少なかったこともあり、東京2020大会は49er級で勝負しようと思いました。
古谷:49er級は日本人がなかなか乗りこなせないイメージがありました。ペアで160kgくらいが適正体重なので、体格から言っても日本人の競技人口は少ないですね。スピード感とその迫力で、いちセーリング選手として憧れる種目です。海に出て49er級に乗っていると、「おっ、49er級だ」とみんな振り返って見る船なので、乗っていて気持ちいいですよ。それほど、多くのヨットファンにとっては憧れの競技だと思っています。
八山:49er級を始めてから自分たちのレベルが世界に追いついているスピード感や、格上だった選手を追い抜いている感覚はあります。49er級は2人とも初心者ですが、他の種目で土台はあったので、船の扱いさえ身に着けてしまえば、戦略などでどんどん上にいける自信はありました。
古谷:下から追い抜かれた感覚の選手はいないので、そういう意味ではどんどんステップアップしているのかなと思います。まだまだ上手くなれると思っていますし、今は、出来ることを精一杯やっている状況です。
八山:アジア選手が世界の大会で活躍することは今までなかったので、自分たちがヨーロッパのトップ選手と競い合うことで、コミュニケーションも取れるようになりましたし、同じレベルで見てくれるようになってきたのかなと思います。
古谷:年下の選手に「グッジョブ」とか「Hi! Boys!」とか言われることもあるので、まだまだ下に見られている感じですかね(笑)。今度、そんなこと言えないぐらい負かしてやるという気持ちですけれど。
八山:海は波や風のコンディションによって、状況が変わってきます。そんな中、ギリギリの性能を引き出して走っているので、船がひっくり返ることもあります。そういった迫力は見ていて楽しめるかと思います。
古谷:何よりもスピード感は他のセーリング競技と比べて大きく違います。また各ヨットには参加国の国旗がついて
いるので、応援しやすいと思います。さらに帆についている3桁のセールナンバーは、世界のトップ10に入ると、前年度の世界選手権の順位が番号として振り分けられます。
そのため、「1」がついている船に乗っている選手は、前年度のトップ選手というわけです。初めて見る人でも、セールナンバーが1桁の選手は有力選手だとわかります。49er級だけの制度なので、そういう面でも他の種目と違って楽しめると思います。
八山:もともと470級からサポートしていただいていたこともあり、東京都の方たちからパワーをもらっているので、アスリートとして頑張らないといけないなと思います。
古谷:東京アスリート認定選手のホームページを拝見させていただき、他にも色々な競技の選手が頑張っていることを知りました。その中で活躍できる選手はほんの一握りだと思いますが、認定していただいた期待に応えられるように、何かを残していきたいと思っています。
八山:49er級を始めてまだ4年しか経っていないですが、その中で自分たちがやってきたことをしっかり出して、メダルを取りたいと思います。オリンピックで成績を残すことも大事ですが、自分たちが活躍することによって、セーリングがもっと広まってくれればいいなと思っています。
古谷:東京2020大会は、一番輝いている色のメダルを取りたいです。セーリングという競技を知ってもらい、少しでも海に興味をもってもらいたいと思いますし、競技人口だけではなく、観戦する人や、海に携わる人も増えていってもらえれば嬉しいです。