東京アスリート認定選手・インタビュー(40)
菅野浩二選手(江東区・中央区) 車いすテニス(2019/2/6)

菅野浩二選手の写真

【プロフィール】
すげの・こうじ 1981年8月24日生まれ。株式会社リクルート所属。
障害:頸椎損傷
2017、2018年 全日本選抜車いすテニスマスターズ(クァード)優勝
2018年 アジアパラ競技大会シングルス(クァード)準優勝
2018年 アジアパラ競技大会ダブルス(クァード)優勝

2017年に、クァード(男女混合上下肢障害)クラスに転向してから目覚ましい活躍を見せる、日本ランキング1位、世界ランキング4位のトップアスリートである菅野浩二選手にインタビューを行いました。

クァードクラスへの転向で
東京2020大会までのビジョンを設定

〜車いすテニスを始めたきっかけを教えてください。〜

菅野浩二選手の写真2

車いすテニスをやっていた先輩が、競技用の車いすを買い換える際、これまで使っていた車いすを譲ってくれたのがきっかけです。競技用の車いすは高価なものなので、当時の自分では買えるものではありませんでしたが、環境が整ったことで折角なので始めてみました。

〜始めた頃のエピソードを教えてください。〜

車いすテニスの前は、車いすバスケットなどをやっていた時期があったので、車いすでの動きは違和感なくできました。ですが、ラケットでボールを打つことはとても難しかったです。それでも、みんなでワイワイと楽しんでやっていました。

〜今までで印象に残っている試合はありますか。〜

2018年6月にフランスで行われた「BNP Paribas Open de France」が印象に残っています。

クァードクラスに転向後、2018年から海外の大会を中心に回るようになり、この国際大会で、当時の世界ランキング1位と3位の選手を破り優勝しました。とても嬉しかったですね。更に頑張ろうと思いました。

〜クァードクラスに転向したきっかけはなんですか。〜

菅野浩二選手の写真3

2016年の全日本選抜車いすテニスマスターズ大会に男子クラス8人の中の1人として出場していた時のことです。当時は趣味としてテニスをし、全国で上位8人だけが出場できるマスターズに出ることを目標に頑張っていたので、その時は目標を達成することができ満足していました。

そこで大会に出場している選手たちと話す中で、クァードクラスに転向したらパラリンピックのメダルを目指せるのではないかというアドバイスをいただきました。そこで、新たな目標としてクァードクラスに挑戦することにしました。

〜クァードクラスに転向して、いかがでしたか。〜

挑戦すると決めてから、自分自身で1年目、2年目と段階を踏んで、東京2020大会までのビジョンを設定しました。1年目は「日本一」、2年目は「アジア一」を目標にしていましたが、アジアパラ競技大会の結果は、2位。目標は達成出来なかったのですが、大舞台の大変さ、日本代表としてのプレッシャーなど様々な経験が出来たことで、収穫はあったと思います。

これまでは日本代表として大会に出場する経験がありませんでした。周囲から期待される中で、従来のパフォーマンスを発揮する難しさを知り、それを東京2020大会までに経験出来たのは良かったです。

〜競技と仕事の両立はどうされていますか。〜

平日は、週3日勤務、週2日練習というスケジュールで、大会出場時は大会を優先させてもらっています。あまり職場にいないと仕事がやりにくい部分もあると思いますが、会社の方で勤務環境を調整してもらえ、非常に助かっています。

今、会社の広報にも携わり、遠征時のエピソードを社内報に掲載したりしています。テニスの競技活動が少しでも会社に還元できていればいいなと思います。

競技を本格的に始めたのが35歳と年齢的にはかなり遅い方なので、ガツガツと競技だけに打ち込むには体力的に厳しいですし、仕事と両立することで身体に無理がないぐらいのペースで、バランスよく活動が出来ているのかもしれません。

〜「東京アスリート認定選手」に選ばれたお気持ちはいかがですか。〜

頑張らなくてはいけない、という思いがあります。

2017年にクァード(男女混合上下肢障害)クラスに転向し、東京2020大会の出場を目指し始めたことで、周囲の期待も大きくなったように思います。期待に応えるためにも、その気持ちが強まっています。

〜東京2020パラリンピックに向けての目標、課題はなんですか。〜

菅野浩二選手の写真4

メダルを獲得することが目標です。現状の課題はショットの安定性です。他のトップ選手たちに比べてミスが多く、強いショットは打てても、それを継続的に打とうとするとミスをして、ポイントを失うことがあります。練習を重ねることで安定したショットを打てるようにしていきたいです。そこをクリア出来ればランキングも上げていけるかなと思っています。

他にはメンタル面で、結構、背負い込んでしまうところがあるので、そこを改善したいです。試合で負けそうな時、会社からサポートされているとか、東京アスリート認定選手であるとか、その期待の大きさを意識しすぎて集中を欠くことがあります。試合中はテニス以外のことは考えず、集中出来るメンタルを保ちたいです。

〜ライバル視している選手はいますか。〜

自分よりランキングが上の3選手です。やはり、他の選手に比べても抜き出たところがあるので、ライバルというよりも目標といったところかもしれません。海外選手の中には厳しい環境で競技を続けていて、国を背負っている、命をかけているぐらいの気持ちで試合に臨んでくる選手もいます。そうしたハングリーさは自分には不足しています。そういう意味では、ライバルは対戦相手全ての選手だと思っています。

〜休日や空いた時間は何をしていますか。〜

特にないのですが、漫画本を読んだり、テレビのバラエティ番組を観たり、声をあげて笑えるようなことをして体を休めています。

〜東京でお気に入りの場所、おすすめの場所はありますか。〜

東京に住んでいるのですが、あまり東京で遊ぶことがありません。強いて言えば、お台場によく食事をしに行きます。そこでは、妻のリクエスト通りのお店を選んであげています(笑)。

選手生活を送れるのも、妻がいてくれるからこそなので、妻にはいつも感謝の気持ちを忘れないようにしようと思って過ごしています。

〜スポーツにチャレンジしてみたい障害者の皆さんにアドバイスをお願いします。〜

菅野浩二選手の写真5

障害は人それぞれなので、テニスをやっていても全く同じ障害・状態の人には会ったことはありません。自分のやっている障害の重いクァードクラスでは、握力がないので手とラケットをテーピングで巻きつけて固定している選手もいれば、電動車いすを巧みに操作してすごいショットを打つ選手もいます。チャレンジしたい気持ちがあれば、諦めないで欲しいですね。諦めずに自分なりに出来ることをやって楽しんでみてはいかがでしょうか。

全日本選抜車いすテニスマスターズ大会初日、試合終了直後の菅野選手に取材させていただきました。クァードクラスへの転向を機に活躍の場が広がり、周囲の環境が変わったことに戸惑いながらも、菅野選手は、どこか冷静に状況を楽しんでいるようでもありました。是非とも東京2020大会へのビジョンを実現して欲しいと思います。

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