東京アスリート認定選手・インタビュー 川嶋悠太選手(東大和市) ゴールボール(2018/10/24)

川嶋悠太選手の写真

【プロフィール】
かわしま・ゆうた 1994年9月24日生まれ。アシックスジャパン株式会社所属
障害:視覚障害
2013年 ワールドユースチャンピオンシップス金
2013年 アジアパシフィック選手権大会銀
2014年 仁川アジアパラ競技大会銅
2016年 日本ゴールボール選手権大会優勝
2017年 アジアパシフィック選手権大会銅

数多くの国際大会で活躍し、現在パラリンピックの代表選手として期待されている川嶋悠太選手にお話を伺いました。

2020東京パラリンピックで結果を出して、
みんなに恩返しをしたい!

〜ゴールボール※をはじめたきっかけについて教えてください。〜

川嶋悠太選手の写真1

中学1年生の体育の授業でゴールボールに出会いました。小学4年生の時に病気を発症し、中学校から八王子盲学校に通い始め、そこで初めてゴールボールを知りました。

中学3年生の時に日本選手権予選敗退を経験したことで、まずは日本選手権に出場したい!という気持ちが高まり、本格的に競技に取り組むようになりました。

※1チーム3名でボールを投げ合いゴールを狙うチームスポーツ。視力の程度にかかわらずアイシェードを装着し全盲状態でプレーします。鈴の入ったボールの転がる音や選手同士の声かけ、相手の出す音、糸が入ったラインの感触などを頼りに行う競技。

〜小学生の時に学校の野球クラブに所属していたということですが、少年野球で得た経験はゴールボールにどのように役立っていますか。〜

ボールがどのような軌道で飛んでくるかを推測しディフェンスができるのは、少年野球時代に培った経験が大いに役立っています。また、チーム競技として学んだチームの中での自分の役割、状況の判断、仲間への気遣いなども当時の野球の経験が活きていると感じます。

〜競技を始めてから、選手として活躍する転機となった瞬間はありましたか。〜

「ワールドユース」大会への出場が、世界で活躍する選手を目指すきっかけになりました。高校2年生の時に「ワールドユース」大会に出場したのですが、あと1勝すれば決勝トーナメントに出場というところで負けてしまいました。このときに優勝したのが、2m近くある大きな選手のいる欧米のチームではなく、アジア勢の韓国。165cmくらいの小柄な選手が体格のよい欧米選手に勝ったのを目の当たりにし、自分も世界で活躍したい!と思いました。

川嶋悠太選手の写真2

また、その2年後に開催された「ワールドユース」大会で、夢だった金メダルを取ることが出来、初めてパラリンピックを意識しました。ここで、パラリンピックが次の夢になりました。

〜ご自身の競技者としての強みはどこにあると思いますか。〜

負けず嫌いで、何事にも妥協しないところが自分の強みです。小柄であることも練習でカバーし、ポジショニングと瞬時に判断して動くスピード感を活かせるよう、ウェイトトレーニングなどで体幹を鍛えています。また、日常的にも、敢えて常に厳しい道を選んで練習することで、競技の技術を磨いています。

〜メンタルトレーニングは、どのように取り組んでいるのか教えてください。〜

合宿の時に、トレーニングのメニューとして「精神集中」を行っています。1分間心を無にするトレーニングです。トレーニング中に気がそれてしまった場合、自分の心を無に戻すということを何度も繰り返し行います。これは、試合中にトラブルなどで試合が止まったり、観客の声が気になったりしたときに、試合に集中力を戻す力につながっています。

〜海外チームの選手の分析はどのように行っていますか。〜

海外チームの選手を分析するために、彼らの試合を動画で見ることもありますし、実際に相手選手の国に行き、現地でそのチームに混ざって練習させてもらうこともあります。

試合などで海外の選手と連絡先を交換し、彼らと連絡を取り合って、去年は中国、リトアニアに練習に行きました。今年10月にはブラジルに行く予定です。

〜チーム内のコミュニケーションで気を付けていることはありますか。〜

先輩後輩関係なく、お互いを理解するよう心掛けています。生活面での価値観も、競技に対する価値観もそれぞれ異なった仲間がチームになっているため、色々と話しをして、お互いを理解することはとても大切だと思っています。

また、普段からチーム全体で力が発揮できるよう、集合時間に遅刻しない等チームの輪を乱さないように気を付けて行動しています。

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〜また試合中に、チームの中で心掛けていることはありますか。〜

試合中は3人で常にコミュニケーションをとり、自分のポジションであるセンターとして冷静に判断し、指示が出せるようなゲームメイクを心掛けています。

〜ゴールボールの魅力と初めて競技を観戦する人へメッセージはありますか。〜

一つは選手と選手、選手とベンチなど、アイシェードで視界を遮断された選手が行うコミュニケーション。もう一つは、競技中の貴重な音。この2つに注目してください。

一つの機能を失った選手が周囲の人たちとどのように対話をして競技に挑んでいるか、また、選手同士が音を頼りにどのように試合に臨んでいるか、を見ていただきたいと思います。選手が、ボールの音や相手選手の息遣いまでも聞き分け、チームで戦略を練っている場面も見られます。また、目を瞑って観戦していただくと、また違った発見があると思います。そして是非、体験してみてください。

〜「東京アスリート認定選手」に認定されて、何か意識が変わりましたか。〜

アスリートとしてしっかり結果を出さなければ、という気持ちが高まりました。認定選手に選ばれ、職場など周りの方々のサポートの有難味を実感しています。アスリートとしてしっかりと結果にこだわって競技に取り組み、皆さんに恩返しをしていきたいです。

〜「アスナビ※」を活用して就職をされましたが、この制度を活用して良かったことはなんですか。〜

アスナビを活用することで、練習環境を確保できたことが一番良かったことです。事前に会社の考えと、自分の考えや条件をしっかりと伝えあい、お互いのメリットを摺り合わせできたことが、とても良かったと思います。

※アスナビ:(公財)日本オリンピック委員会が実施する無料職業紹介事業。
日本オリンピック委員会 - アスナビ

〜休みの過ごし方や生活や練習環境の中でお気に入りの場所はありますか。〜

川嶋悠太選手の写真4

休みの日も家やジムでトレーニングを行っています。趣味は散歩で、お気に入りの場所は多摩湖の堤防。堤防を挟んで左は湖、右は住んでいる街並みが見えリラックスできると同時に気持ちをリセットすることができます。

〜最後に2020年のパラリンピックに向けての課題と目標をお聞かせください。〜

課題は、個人としてまだまだ未熟なところがあるので、世界で活躍できるスピード技術を身に着けていきたいです。また、目標としては、チームでメダルをとり、皆さんに恩返しをしたいです。今に満足することなく高みを目指して取り組むことで、2020年をベストコンディションで迎えたいです。

一般社団法人 日本ゴールボール協会 池田常任理事のお話

小学4年生で網膜色素変性症を発病するまで野球少年だった川嶋選手に、スポーツにかける気持ちを向かわせる場所を与えたくて、ゴールボールを勧めました。世界の選手と比べ、体が小さく、仕事をしながらの練習というハンディがありながらも、それを乗り越えるセンスや瞬発力が川嶋選手にはあると期待しています。

パラリンピックでは、日本チームらしいきめ細かな技術や戦略、チームワークを世界にアピールし、メダルを目指していきたいです。

インタビュー時、川嶋選手から、「ぜひ、ゴール裏に座って目をつぶってみてください」と言われ、実際にやってみたところ、選手の動き、ボールの近づく音など、見ている以上にスピーディーなことに驚きました。感覚を研ぎ澄まし、瞬時に反応する選手たちの勇姿を生で見て欲しいと思います。

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