課題も見えたオリンピック。好きなフェンシングをもっと突き詰めていきたい

会場となったグラン・パレの階段を堂々と降りてくるフェンシング選手たちの姿が印象的だったパリ2024オリンピック。サーブル団体で銅メダル獲得と活躍をみせた江村美咲選手だが、休むことなく国内外さまざまな大会に挑み続けている。フェンシングの魅力や、地元である板橋区のことなどについて伺った。

(プロフィール)
えむら・みさき 1998年11月20日生まれ。大分県出身。立飛ホールディングス所属。小学3年生からフェンシングを始める。東京2020オリンピック個人13位、団体5位。2022年W杯チュニジア大会にて個人金メダル、団体銀メダル。2022年、2023年世界選手権大会にて個人金メダル。パリ2024オリンピックにて個人9位、団体銅メダル。2021年からフェンシングで初のプロ選手に。

これからの課題が見えたパリオリンピック

東京に続き、2度目のオリンピックを振り返っていかがでしたか。

東京ではメダルがあまり現実的ではありませんでしたが、パリはメダルを狙える位置にいたので、メダルへの本気度は違ったと思います。自身のベストを尽くすことがメダルにつながるという気持ちで挑みました。
ただ終わってみると、できなかったことだらけで、苦しかった思いのほうが強いです。駆け引きを自由に繰り出すことが私のフェンシングの特徴ですが、それが個人戦では全然できなかったと感じています。

個人戦では悔しい思いをされましたが、団体戦では銅メダルに輝きました。

団体戦では期待以上の結果を出せたと思っています。フェンシングは個人競技で、団体戦であっても個人がそれぞれ戦う特殊なスタイルです。以前は団体戦にどう向き合えばいいのか、自分の中で整理できていないところがありましたが、その思いが今回のオリンピックで払拭されました。他の選手がいい結果を残せば、その流れを引き継ごうと思う。単純に得点だけでなく、戦う姿勢に刺激を受けることもあり、それが自身の力にもなるし、チームの力にもなるんだと実感しました。

フェンシングの魅力とは何でしょうか。

やはり駆け引きの部分ですね。相手の攻撃をどのように交わすのか、自分がどう攻撃するのか、圧倒的なスピードをもって展開していくところです。ただ私がフェンシングの魅力に気づいたのは高校生になった頃からです。それまでは勝った負けたばかりを見ていて、駆け引きの部分がいかに重要で、魅力的かということを十分には理解していませんでした。
だから初めてフェンシングを見た人が、すぐにフェンシングの魅力を理解するのは難しいかもしれません。見ているのと実際にするのでは楽しさが100倍違うので、機会があれば剣を手にしてみてほしいです。

応援の声に励まされて

Diorのスポーツアンバサダーに就任されるなど、江村選手のご活躍でフェンシングを知る人が増えたのではないでしょうか。

メディアに登場させていただく機会も増えましたが、こうした活動は自分が好きだからやっていることです。フェンシングもファッションも両方好き。その好きなことを突き詰めていったら、応援してくださる方が増えて、その応援の声に励まされることで、さらに頑張れているという感覚があります。
日本も全種目で世界相手に勝てるようになってきましたが、勝ち続けている国は選手の層が厚いです。層の拡大には競技人口を増やすことが不可欠なので、どんな形であれ注目いただいて、フェンシングを始める人が増えたり、資金面など競技環境が良くなるといいなと思っています。

フェンシングに興味を持った子どもたちにアドバイスはありますか。

フェンシングは他のスポーツと違って、運動神経はあまり関係ないスポーツです。私がフェンシングを始めた小学生の頃は、筋肉も全然なくて、体力測定の結果も下のほうばかりでした。練習を重ねることで徐々にフィジカルもついてきましたが、選手の中には走るのが遅い、球技がダメという選手もいます。実際にやってみないと誰が伸びるかわからないので、まずは挑戦してほしいです。

練習後のラーメンがご褒美

東京ゆかりのアスリートとして、板橋区在住ですね。立飛ホールディングスに所属されてから本社のある立川市とのご縁もあるかと思います。

小学生の時に大分県から引っ越してきて、板橋区在住になりました。練習場所の味の素ナショナルトレーニングセンターから近いラーメン屋さんがお気に入りです。体重を管理しているのでしょっちゅう食べることはできません。けれど頑張ったから今日はラーメン食べてもいいんじゃないと思える日に、チームメンバーと出かけたりしています。そのお店のラーメンは私にとってご褒美的なものですね。
板橋区での暮らしが長くて、立川市のことはよく知らなかったのですが、トークイベントに参加させてもらうなど立川市のことを知る機会が増えました。暮らしたいと思えるほど気に入っています。自然が好きだから、緑の多い立川市に行くとホッとします。

今後の目標を教えてください。

まず団体戦はこれからが勝負だと思うので、チームメンバーで信頼関係を築き、チーム力を上げていけるよう取り組んでいきたいと思っています。信頼関係を築くために積極的に話をしたり、小さなことからですが始めています。今後はチームを引っ張っていくことにも挑戦してみたいです。それから私自身の目標としては、もっと心技体のクオリティを上げていくこと、そして結果につなげていくことです。