車いすラグビーの知名度を上げたい。そのために結果を出す
- 車いすラグビー
- 小川仁士 選手
- 武蔵村山市
車いすと車いすが激しくぶつかり合う、迫力満点の車いすラグビー。障がいの重い人と軽い人、男女が一緒にプレーできる珍しいスポーツでもある。そんな車いすラグビーでローポインターとして活躍する小川仁士選手に、パラリンピックの思い出やご家族と暮らす武蔵村山市について聞いた。
(プロフィール)
おがわ・ひとし 1994年6月2日生まれ。東京都武蔵村山市在住。バイエル薬品所属。高校3年生の時にモトクロスのレースで頚髄を損傷。入院先で車いすラグビーを知り、リハビリを兼ねて練習を始める。障がいの程度は2番目に重度の1.0クラス。東京2020パラリンピックで銅メダル獲得。2023WWRアジア・オセアニアチャンピオンシップ優勝。
パリ2024パラリンピック金メダル獲得。
大きな声援にワクワクが止まらなかった
パリ2024パラリンピックでの金メダル、おめでとうございます。
率直に嬉しいですが、ホッとしたという気持ちもあります。パリに行く前にさまざまな場に呼んでいただいて話をする機会があって、僕はどの場でも金メダルを持ち帰りますと宣言していました。金メダルを取れなかったら日本には帰れないという気持ちでいたので、安心しましたね。
東京2020パラリンピックは無観客だったので、パリ2024パラリンピックの初戦で会場入りする際に大きな歓声に包まれて、これがパラリンピックなんだとワクワクしました。特に決勝はホームで戦っていると錯覚するくらい日本人の声援が多く、とても力になりました。苦しい展開に追い込まれたときに声援を力に変えて逆転できた場面もあり、大きなパワーをもらえたと思っていますし、楽しくプレーすることができました。
延長戦での粘り強さを強化したことが自信に
東京2020パラリンピック後の3年間で、どんなことを強化してきましたか。
車いすラグビーはあまり点差がつかないスポーツです。わずか1、2点で勝敗が決まることが多いので、延長戦に突入しても自分たちのプレーに徹して、最後まで全力を出せるかどうかが勝敗を左右します。日本代表チームは、過去のある試合で延長戦の末に負けたという苦い経験があるため、合宿では特に延長戦に入ってからの3分間の戦い方の練習を繰り返しました。練習量に自信があったので、パリでの準決勝、オーストラリアとの試合で延長戦に入った瞬間に必ず勝てると確信しました。
個人的にはパスの練習を徹底しました。僕は攻撃の起点をつくるインバウンド(スローイン)というポジションなので、僕がパスでミスをすると簡単に1点奪われてしまいます。だから正確なパスを出すための練習にはかなり力を入れて取り組みました。
日本代表チームの中で小川選手が果たす役割とは何ですか。
今は日本代表チームのなかでも中堅どころになりました。まずは自分のプレーを確立させること。そしてチームの若手とベテラン選手がコミュニケーションを図れるよう橋渡し役を務めるのも僕の役目だと思っています。若手にとってベテランは恐れ多い存在です。僕も最初は恐縮していましたが、車いすラグビーはチーム戦でコミュニケーションがとても大事です。自分から積極的に話しかけ、先輩たちと関係性ができてくることで日本代表チームのチームワークが強化されたと感じているので、今後も橋渡し役を務めていきたいです。
車いすラグビーの知名度向上に寄与したい
まずは2026年に開催される世界選手権での優勝、そしてロサンゼルス2028パラリンピックに出場して2大会連続優勝を目標にしています。
それから知っているパラスポーツは何かと聞かれた人が、最初に「車いすラグビーです」と答えるくらい、車いすラグビーをメジャーなスポーツにしたいという思いが強くあります。最近ではメディアで取り上げられる機会が増えてきましたが、パラリンピックのような大きな大会で僕らが結果を残すことも知名度を上げることにつながると思うので、車いすラグビーのことを発信するだけでなく、十分な結果を残せるよう努力したいです。
車いすでも暮らしやすい街
東京ゆかりのパラアスリートとして、ゆかりの地は武蔵村山市だと聞いています。武蔵村山市で思い出深い場所はありますか。
家族で暮らす家を建てたくて、妻の実家に近い武蔵村山市に移り住んだのが2018年です。実際に暮らしてみて感じているのが、坂が少ない街ということです。車いす利用者は暮らしやすいと思いますね。公園が多くて自然が豊か。休日に家族で公園に出かけたりもしています。最近ですが、武蔵村山市で暮らしてきて一番ビックリしたことが起きました。近所のコンビニエンスストアの店員さんから、パラリンピックから戻った際に「おめでとうございます」と声をかけてもらったことです。今まで何度も利用してきたコンビニエンスストアで、特に話をした記憶もない店員さんだったので本当に嬉しかったです。