悔いのない水泳人生のために、今日も泳ぎ切る

3 度のオリンピック出場を果たした競泳・池江璃花子選手。2028 年に開催予定のロサンゼルスオリンピックを目標に据え、厳しい練習の日々に戻った池江選手に、パリ 2024 オリンピックについて現在の心境、そして地元・江戸川区のことなどを伺った。
(プロフィール)
いけえ・りかこ 2000 年 7 月 4 日生まれ。東京都江戸川区出身。横浜ゴム所属。中学 1 年生で出場したジュニアオリンピックカップ春季大会で、50m・100m 自由形の短水路中学記録を更新。高校 1 年生で出場したリオ 2016 オリンピックでは、100mバタフライ 5 位。2017 年日本選手権で女子史上初の 5 冠、2018 年アジア大会で史上初の 6 冠を達成。2019 年 2 月に白血病と診断され闘病生活に。2020 年 8 月東京都特別水泳大会で実戦復帰し、翌年の東京 2020 オリンピック出場。パリ 2024 オリンピックでは混合 4×100m メドレーリレー、女子 4×100m メドレーリレーで決勝に進出。

私には水泳しかない。その気持ちを支えに

3 度目のオリンピックはいかがでしたか。

リオ、東京、パリと 3 大会連続でオリンピックに出場できたことは自分でもすごいことだと思います。東京大会はリレー種目のみの出場だったので2度目の個人種目出場と強調されることもありましたが、私にとってはリレーも個人も関係なく、目の前のレースに取り組んできました。
ただ、得意なバタフライで結果を残したかったという気持ちは残りました。レースが終わった直後は、オリンピックに出場できる数少ない日本代表の一人に選んでもらったのに、どうして自分は弱いのかなと落ち込みました。気持ちが整理できるまで少し時間がかかりましたね。私はメンタルが強そうだと思われがちですが、練習やレースでうまくいかなかったらすごく落ち込みます。だけど、うまくいかなかった練習の後に、納得のいく練習ができたりすると、私には水泳しかないって思えるんです。そういう気持ちがまた私を前向きにさせてくれたのかもしれません。

レース以外での思い出はありますか。

カヌーの羽根田卓也選手とカフェで偶然会うことが多くて、本当にたわいもない話ばかりでしたが、お茶をしながらいろいろと話しました。選手村の中にアイスクリームを食べられる場所があって、他の選手たちとみんなで食べに行ったりもしました。オリンピックだけでなくアジア競技大会なども同じですが、他競技の選手とコミュニケーションをとれる大会はやはり楽しいです。違う競技の選手だからこそ話せることもあって、そんな時間がとてもリフレッシュになりました。

後悔を残さないためにオーストラリアへ

練習拠点をオーストラリアに移したのは、どんな理由からですか。

東京 2020 オリンピックの直前だった 2019 年に白血病を罹って、闘病生活を終えた後に競技復帰して結果も残せたので、日本の練習環境が合っていないということではありません。ただ自分の中で、どうしてもマイケル・ボールコーチに練習を見てもらいたいという気持ちが強かったです。これだけ練習を重ねてきたんだから、悔いのない水泳人生を最後まで送りたいと思っています。だから競泳を引退するまではオーストラリアで頑張ろうと覚悟を決めました。

悔いのない水泳人生とは、ご自身が納得される結果を残すということですか。

ロサンゼルスオリンピックに出場して優勝するという目標もありますし、厳しい練習を繰り返していると、どうしても結果を求めたくなります。でも頑張ったからといって必ず結果がついてくるわけではありません。これはスポーツに限ったことではなく、仕事をしている人なども同じことが言えるはずです。
特に病気になった後は、世界大会で優勝するなど結果を出すことが本当に自分にとって全てなのかと考えることが増えて、結果だけが全てではないと思う自分もいました。結果を残せたらそれはすごく嬉しいことですが、結果が出なかったとしてもやはり私は水泳が好きなんです。速く泳げたらシンプルに気持ちがいいですからね。だからロサンゼルスオリンピックが開催される 2028 年までは全力でやり切る。後悔のない、楽しかったと思える水泳人生を送るんだという気持ちを大切に、練習に励んでいます。

友達と外で遊びまわった江戸川区

東京育ちアスリートとして、生まれも育ちも江戸川区だと聞いています。

日本に滞在中は、今でも地元の友達に会うことが多いです。生まれ育った街だから、やはり住みやすいと思いますし、思い出の場所はたくさんあります。冬はスケートができる江戸川スポーツランドなど、運動できる場所にはよく行っていました。水泳を始めた頃に通っていたスイミングスクールも江戸川区内にあります。身体を動かさない文化系の習い事もしていて、習い事の時間が近づいてきても、友達と公園で遊んでいるのが楽しくなってしまうこともありましたが、水泳だけは遊びの誘惑に負けなかった。プールに行けば友達がいて、楽しくて仕方なかった。私の中で水泳は遊びの一環だったんですよね。
子ども達には、水泳に限らず楽しんで打ち込めるものを見つけて欲しいと思います。