空手の形がもつ、真の意味を探求し続けて
- 空手 形
- 尾野真歩 選手 (東大和市)
仮想の敵への攻撃技・防御技を一連の流れとして組み合わせた演武形式である空手の形。その形で頭角を現しているのが尾野真歩選手だ。2024年には空手の国際大会であるプレミアリーグでグランドウィナーに輝くなど今後が期待されている。空手への思いや、生まれ育った東大和市について伺った。
おの・まほ 1999年2月9日生まれ。東京都東大和市出身。キッコーマン株式会社所属。5歳で空手を始め、小学生になると東京都のジュニア強化選手に。以来、数々の好成績を収める。KARATE 1 プレミアリーグパリ2024優勝、KARATE 1プレミアリーグカサブランカ2024優勝、第78回SAGA2024国民スポーツ大会準優勝、KARATE 1 プレミアリーグパリ2025優勝。
気がついた時には、道場で空手の稽古に励んでいた
私は5歳のときに空手を始めました。6歳上の兄が空手を習っていて、全国大会などでいい成績を残していました。その姿に憧れたのだと思いますが、気づいたら道場にいたというか、当時のことはもう記憶にないです。ただ小さい頃から運動は好きで、校内でマラソン大会などがあると張り切るタイプでしたね。小学6年生から中学3年生まで東京都のジュニア強化選手として登録いただいて、都大会で優勝できるようになりました。
高校ではインターハイ優勝を目標に、さらに練習に励みました。その頃から勝敗だけでなく、空手との向き合い方もどんどん変わっていきました。
空手の、特に形の魅力とはどんなところにあるのでしょうか。
競技としての空手が注目されがちですが、もともと空手は沖縄琉球で護身術として伝承されてきた「手(ティー)」に、中国拳法の流れを汲んで発展した歴史があります。まずは自分の体を守るための武術だったのです。突きや蹴りのスピードある力強い動きに目がいきがちですが、ベースにあるのは身体操作で、相手に対する関節技など身を守るための技も多く含まれます。形とは何かという理解が広まれば、もっと興味をもっていただけるのではないかと思います。
特に東京2020オリンピックで空手が競技種目に選ばれて、注目を集めることになりました。オリンピックを通して先輩方が空手を広めてくださったので、その先をさらに広めていくのは自分の役目でもあると感じています。
未来を実現する力が自分にもあると自信がついた
SAGA2024国民スポーツ大会では準優勝ほか、2024年は数々の大会で結果を残されていますね。
そうですね、2025年の世界選手権で優勝することを、ここ2年ほど意識して取り組んできました。世界選手権に出場するためには、特に2024年のプレミアリーグ、アジア選手権などで自分の存在感を示さなければという気持ちが強かったです。そうしたなかでSAGA2024国民スポーツ大会にも参加しました。それぞれの大会で一定の結果を残せたこと、そしてプレミアリーグの年間王者に贈られるグランドウィナーを獲得できたことは本当に嬉しいことでした。
国内外問わずこれまでなかなか優勝に手が届かなかったので、悔しい思いをし続けてきましたが、自分が目指してきた未来を実現する力があるんだと言ってもらえたような気がして、自分を少しだけ認めてあげることができました。
尾野選手が空手に挑み続ける、モチベーションとなっていることは何でしょうか。
今は世界選手権での優勝という目標です。また、空手で成し遂げたいことがあるというのもモチベーションのひとつですが、空手をもっと突き詰めたい、そして空手の良さを多くの人に伝えたいという気持ちが強いからではないでしょうか。
大学生のときには大きなケガをして、もうダメかもしれないと思いました。けれどその時に、ケガは自分の弱さを教えてくれるものだと思ったんです。なぜケガをしたのか、自分の身体の使い方が違ったからであって、このままではいけないとケガが教えてくれました。弱いところを教えてもらえたのだから、そこを改善すればいいと考えられるようになりましたし、弱さを克服することでより強い自分になれるのだと感じました。経験や年数を重ねれば重ねるほど、新しい発見があります。空手は本当に奥深いものです。
空手本来のルーツを深く理解し、広めていける存在になることもモチベーションのひとつです。
初日の出は多摩湖で。気持ちを新たにする場所
東京育ちアスリートとして、出身は東大和市だと聞いています。東大和市で思い出深い場所はありますか。
多摩湖です。高校生くらいから、元日には必ず初日の出を見に行っています。東大和市民なら多摩湖の初日の出は有名だと思います。普段はランニングしたり、散歩している人がまばらにいるような憩いの場ですが、元日にはたくさんの人で賑わっています。私も朝6時前には家を出て多摩湖に行くのが、元日のルーティンですね。地元の友達と初日の出を見て、今年も頑張ろうと気持ちを新たにしています。私にとっては今もほっとする地元です。