スピード、迫力、そして戦略。スラロームの魅力を広めたい

東京2020オリンピックの会場となったカヌースラロームセンターで、4年後のオリンピックを目指して練習に励む禰寝大亮選手。最初はカヌーが怖かったという禰寝選手が、カヌーの魅力に目覚め、期待のホープとなるまでの道のりや、カヌーに出会った地元・奥多摩町について聞いた。

ねしめ・だいすけ 2003年7月24日生まれ。東京都西多摩郡奥多摩町出身。国士舘大学所属。中学生からクラブチームでカヌー・スラロームのトレーニングを始める。2021年第44回NHK杯全日本カヌー競技大会5位、2022年ワールドカップフランス大会出場、2022年ジャパンカップキョクヨーシリーズ最終戦優勝、2024年第78回国民スポーツ大会成年男子スラローム・カヤックシングル15ゲート優勝、25ゲート2位。

嫌々通っていた練習。それでもカヌーに目覚めた理由

カヌーを始めたきっかけを教えてください。

私がカヌーを始めたのは小学1年生の時です。奥多摩町では、多摩川を利用してカヌーやカヤックなどが盛んに行われていて、カヌー教室への参加を両親にすすめられたのがきっかけで始めました。カヌーに慣れるまでは流れのある多摩川には行けません。白丸湖で練習を続け、小学校の高学年に上がったくらいから多摩川での練習が始まりました。
週4回の練習に最初は嫌々通っていました。カヌーはバランスを取るのが難しく、慣れていないとすぐにひっくり返るんです。ひっくり返るのが怖かったので、当時はまだ楽しいと感じていませんでした。

それでも中学に入ってからクラブチームでトレーニングを開始されていますね。

いわゆる草レースと呼ばれる公式戦以外のレースに参加して、結果が出るようになるとだんだん楽しくなってきました。結果が出るのが嬉しかったんです。
ただカヌーの本当の魅力に気づけたのは、高校に入ってからです。私の種目はスラロームで、激流のあるコースの上から吊るされた赤と緑のゲートを通過しながらタイムを競うものです。スピード感も迫力もある競技ですが、タイムを早くするためには戦略もかなり重要で、自分で戦略を練りながら取り組めるところに魅力を感じています。

基礎を徹底的に反復。それがテクニックを支える

2024年10月に開催されたSAGA2024国民スポーツ大会では、優秀な成績を残されましたね。

スラロームは15~25個のゲートがあって、そのゲートの数によってレースが分かれています。私は15ゲートで優勝、25ゲートで2位に入りました。今年はジャパンカップランキングも1位になり、成績が上がってきていることを自分でも感じています。いい流れができているので今後も練習を重ねて常に上位に食い込める選手になりたいです。

日々、どのような練習を行っていますか。

カヌースラロームセンターで週6日練習を行っています。他の選手やコーチに相談もしますが、自分の身体のことは自分が一番理解しているので、最適な練習法や戦略の最終的な判断は私が行っています。練習では例えばまっすぐ漕ぐとか、一点でひたすら回る練習など基礎的なことを繰り返します。結局テクニカルなものを支えてくれるのは基礎力だから、基礎をおろそかにしないことを常に意識しています。

4年後のロサンゼルスオリンピックが最大の目標

今後の目標は何ですか。

ロサンゼルスオリンピックに出場するためには、2027年に行われる日本代表選考会で上位3名に入らないと出場権を得られないので、3名に残ることが当面の目標です。高校生の時にU18の日本代表に選ばれましたが、コロナ禍で派遣がなかったので国際大会の経験が少ないです。できる限り国際大会に出場して、大きな大会だからこそ経験できることを吸収して成長したいですし、スラロームを知ってもらうために活動したいとも思っています。

スラロームの認知度を上げるための具体的な活動とは?

オリンピアンの卓也さん(羽根田卓也選手)が活躍されたことで、国内大会の観客数も増えましたが、その多くは卓也さんのファンです。もっとカヌーの観客が増えたらいいなと思っています。私があえてカヌー部のない大学に行ったのも、自分の活動が多くの人に知ってもらえるきっかけになるかもしれないと考えたからです。大学からの取材対応なども全部対応していますが、もっとスラロームを知ってもらうための活動にも力を入れたいです。

大自然の中で遊んで育った

東京ゆかりのアスリートとして、ゆかりの地は奥多摩町だと聞いています。奥多摩町で思い出深い場所はありますか。

現在は練習場の近くに住んでいますが、オフシーズンや真夏には奥多摩で練習しています。カヌーの練習をしてきた白丸湖も多摩川もありますが、何より子どもの頃から慣れ親しんだ町なので愛着があります。人口が少ないので保育園から中学校まで、クラスのメンバーは全員同じ。だから仲がいいんです。学校終わりにみんなで山に行って遊んだりしていました。自然しかない、けれどそれが奥多摩町の魅力かもしれません。