過去の自分を超えていくことを目標に、全力を出し切りたい
- パラ陸上
- 中村来夢 選手 (江戸川区)
競技用車いすでスピード感あるレース展開を繰り広げる車いす陸上。その車いす陸上で今後の活躍が注目される中村来夢選手は、パラアスリートとしてだけでなく、モデルとしても活躍している。第24回全国障害者スポーツ大会(わたSHIGA輝く障スポ2025)出場への思いや、今後の目標について伺った。
なかむら・らいむ 2007年生まれ。東京都江戸川区出身。9歳で車いす陸上を始める。東京マラソン2023 10.7㎞車いす女子1位。特別全国障害者スポーツ大会(燃ゆる感動かごしま大会)800m・1500m1位。アクセシビューティーマネジメント所属。
周囲の景色がどんどん変わっていく。そのスピード感に圧倒されて
8歳のとき、ダンスの練習中に逆立ちをしているときにバランスを崩して倒れ、脊髄を損傷したことで車いすの生活になりました。1歳半から水泳を始め、ダンスやスケートも習っていて、体を動かすことが大好きでした。そんな私が突然車いす生活になり、最初は落ち込みました。でも、車いすだからスポーツができなくなるとは考えませんでした。
母がパラ陸上と関わりをもっており、パラスポーツが身近な環境で育ちました。車いすでスポーツをする人たちを見てきたから、パラスポーツに挑戦することができたのだと思います。
数あるパラスポーツの中で、車いす陸上を選んだ理由は何ですか。
母に江戸川区主催の車いす陸上教室や、東京都主催のパラスポーツ体験会に連れていってもらい、バスケットボールやテニス、アーチェリーなどを体験したなかで、車いす陸上を選びました。
車いすの生活になってから、健常者だった頃の生活と一番違うと感じたのは、歩いたり走ったりするスピードです。いくら一生懸命に車いすをこいでも、走るスピードには追いつけなくて、もどかしかった。けれど、車いす陸上で使うレーサー(競技用車いす)に乗せてもらったとき、驚くほどスピードが出たんです。周囲の景色がどんどん変わっていくことに感動しました。実際のレースを見ていただくとスピード感に驚かれるはずです。このスピード感が車いす陸上の魅力だと思っています。
参加者同士の交流も楽しかった全国障害者スポーツ大会
第24回全国障害者スポーツ大会(わたSHIGA輝く障スポ2025)に出場されますね。
大学受験のために1年間練習をお休みしていたので、全国障害者スポーツ大会への出場は、2023年のかごしま大会に続いて2度目です。かごしま大会では、手話を勉強していたときに覚えた指文字で、聴覚障がいのある選手たちと交流ができました。指文字だけでも簡単な会話ができるので少しお役に立てたのか、たくさんの選手と話す機会があって、仲良くなれたことが特に印象に残っています。
私は14という区分で800mと1500mの2種目に出場予定ですが、2年前のかごしま大会でも同じ種目に出場しており、当面の目標は2年前の自分を超えることです。さらに言うと、私がお世話になっている先輩選手が出した大会記録を超えることも狙っていきたい。1年間のブランクの大きさを感じていますが、もうやるしかないという気持ちで挑むつもりです。
アスリート、モデル、大学生、全部を全力で
大会出場に向けて、どのような練習を重ねてきましたか。
車いす陸上の練習は、週2回程度トラックで練習して、それ以外の日はコーチから指示があったメニューで自主練をしています。練習できる日は限られているので、自主練のメニューを自分で増やしたりしながら、練習時間を増やせるよう工夫しています。
私はパラアスリートですが、大学生でもあるし、モデルとしても活動しています。毎日が分刻みのスケジュールで忙しいですが、その忙しさも楽しむぞという気持ちでいます。
芸能の仕事は、本当に小さな頃から憧れていたんです。高校生のときに障がい者専門の芸能事務所があることを知って、オーディションを受けました。その結果、アスリート、大学生、モデルという顔を持つことになりましたが、この三つとも全部、中村来夢だと思っています。どれも自分で、どれも全力で頑張ることが私なんだと。それぞれの中村来夢を応援してもらえたらと思っています。
それはいつも感じています。まず母、それからコーチ。高校生の時に出会ったコーチのもとで陸上をしていなければ、こんなにアクティブでいられなかっただろうし、友達の応援も力になっています。サポートということでいえば、地元である江戸川区で車いす陸上を始められたことも、私にとっては大きかったです。環境を与えていただいたことに感謝しながら、それを励みに頑張りたいです。
パラスポーツに触れる機会を、より多くの方との接点に
かごしま大会に参加したときにも感じたのですが、大会を開催するには、本当に大勢の方の協力が不可欠です。出場する側として、皆様の協力にとても感謝していますということをまずはお伝えしたいです。
一般的なスポーツ大会と違って、全国障害者スポーツ大会は、障がいをもった方がスポーツに挑戦する機会でもあると思います。私にとっても励みになる大会ですし、パラスポーツを見たことがないという方にもぜひ観戦いただきたいです。