東京アスリート認定選手・インタビュー(49) 石浦智美選手 水泳(身体)(2019/11/18)

石浦智美選手の写真

【プロフィール】
いしうら・ともみ 1988年1月13日生まれ。伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社所属
2018年 アジアパラ競技大会100m自由形4位、50m自由形7位
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石浦智美選手は視覚障害に関係なく、一番平等にできるスポーツとして水泳を選びました。そして、高校生で国際大会に出場。大きく成長させてくれたコーチと出会い、アスリートとして環境を整え、東京2020パラリンピックで金メダルを目指しています。

~まず、水泳を始めたきっかけを教えて下さい~

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小さい時は喘息ぎみで病弱だったので、お医者さんから勧められて、2歳から水泳を始めました。もともと2人の兄も水泳をやっていたので、私にとって身近なスポーツでしたし、始めることはとても自然な流れでした。

私は先天性緑内障と無光彩症だったので、小さい時から視力が0.01くらいしかなく、将来的には見えなくなると言われていました。

スポーツは競技によって出来ること、出来ないことがありましたが、水泳は視覚障害に関係なく一番平等にできるスポーツだと考え、どんどんのめり込んでいったんだと思います。

~競技として水泳をやってみようと思ったのはいつ頃ですか?~

小学4年生の時に、新潟の障害者水泳を指導している方に出会って、障害者の水泳大会があることを教えて頂きました。関東選手権に出場したのが、競技として本格的に水泳を始めるようになったきっかけです。

また、その年にシドニーでオリンピックがあったので、日本人の活躍するニュースを聞いて「自分もパラリンピックに出てみたいな」とぼんやりと憧れを抱くようになりました。

~世界を意識したのはどのぐらいからですか?~

筑波大学付属視覚特別支援学校に入学してから、卒業生の河合純一さんの活躍や同級生の秋山里奈ちゃんが、アテネを目指している姿を間近で感じることで、その頃からはっきりと私も世界を目指したいと思うようになりました。

そして、高校3年生の時に初めて国際大会に出場したんですが、英語で自分の名前が呼ばれたり、日本と違って歓声も大きく盛り上がる会場の雰囲気にとても興奮しました。緊張よりも『国際大会って楽しい!』というのが一番の感想でしたね。

~性格的に大舞台に強い印象を受けるのですが?~

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そんなことはないです。一時期はとてもネガティブに考えてしまい、一度水泳をやめようと思ったこともあります。ここ数年は大分落ち着いてきて、そんなネガティブな気持ちは消えつつありますが、いつも「レースで失敗したらどうしよう、練習ではどうすればいいんだろう」という不安な気持ちを抱えながらレースに臨んでいました。

~練習はどうされていたのですか?~

2016年までは専属のコーチがつけられず、ほぼ自主練習。継続的に教えてくれるコーチを見つけることは非常に難しい状況でした。また、全盲クラス(S11)だとタッピングサポートが必要なんですが、金銭面の負担もあって、付けたくても付けることが出来ませんでした。

なかなか上手くいかず、泳ぎ込んでいた割にタイムが伸びない状況。フルタイムで働きながら練習をしていたこともあり、睡眠時間が足りず身体も限界。あの当時は体力もメンタルも相当追い込まれていました。

~どのようなきっかけが転機となりましたか?~

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そんなどん底の状況を変えてくれたのは、谷川哲朗コーチ(当時、慶應義塾大学特任助教)との出会いでした。2014年のアジアパラ競技大会で私のタッピングを担当してくださった縁から、繋がりはあったんですが、大阪で勤務されていたので、なかなか会う機会がありませんでした。

しかし、2016年から東京で勤務されることになったので、そこから2017年3月まで、週に1回専属コーチとして指導頂きました。まず、谷川コーチから言われたのが、『アスリートとして環境が悪い』というご指摘でした。そこで、競技に集中できる環境を整えようということから始まり、2017年には転職して競技への支援もしていただけるようになり、費用面の負担も少なくなくなりました。

~谷川さんはどんなコーチですか?~

谷川コーチは、自分のいいところを伸ばしてくれるタイプ。さらに一緒に水に入って、身体の使い方を根気よく教えてくださいました。私のような全盲の選手は、しっかりと泳げているか見て確認もできないし、言葉だけで理解するのにも限界があります。

谷川コーチは、まず動きの構造を理論的に教えてくださり、それと並行して身体の使い方をじっくりと教えてくださったので、私の泳ぎは大きく変わりました。今の自分があるのは、谷川コーチとの出会いが大きかったと思います。

~東京2020大会に向け、課題はありますか?~

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レースの後半、苦しくなってくると失速してしまうことが多いので、最後まであきらめないで粘りのある泳ぎをしたいと思っています。よく『ライバルは誰ですか』という質問を受けますが、そもそも他の選手が泳いでいる姿が見えないので、あの選手より早く泳ぎたいとか、この人には負けたくないというような、ライバルという感覚はあまりありません。

見えないからこそ自分との闘いなんです。反対に観客が多い大会でも、視覚的な情報が入ってこないので、会場の雰囲気に圧倒されることも少ないです。自分の世界に入り込めるというのも、他のパラアスリートとは違うかもしれません。

自分のテーマは「より速く」。今、タイムが伸びつつあるので、自分としてもいい準備が出来ていると思っています。前回のリオデジャネイロ2016パラリンピックは0.3秒の差で出場することが出来なかったので、その悔しさが東京につながっています。パラリンピックは出たことはないので、どこまで楽しめるか分かりませんが、まずは出場できるように頑張ります。

~東京2020大会を1年後に控えて盛り上がりは感じますか?~

昔に比べたらパラ水泳をやってみたいという子供たちも増えてきていますし、競技人口も増えていると思います。また、以前に比べて、競技を応援してくださる企業も増え、パラアスリートへの支援も少しずつ広がっていると思います。

私のような視覚障害者が競技を続けるうえでサポートは必須です。私もそうだったように、指導者を見つけること、タッパーを見つけることはとても大変です。だからこそ、競技人口が増えて、それに伴って指導者も増えてくれればいいと願っています。そして、指導者が職業として成り立っていけるような社会になって欲しいと思います。

~東京2020大会の先に期待することはありますか?~

よく『障害を持っている=かわいそうな人』というイメージをもたれることが多いように感じます。偏ったイメージを持つのは、障害についてよく知らないからだと思います。

だからこそ、パラリンピックで競技を見るだけでなく、競技を離れた選手の様子にも興味を持って見てもらいたいです。特にパラリンピックは人が支え合って競技が成り立っているところがあります。個人競技であっても団体競技のようなチームワークも大切なんです。そこにも注目してもらいたい。

また障害者スポーツはリハビリのためだけにやっているのではないことも知ってもらいたいです。パラリンピックに出る人はアスリートとして選ばれた人。だから、パラスポーツも他のスポーツと同じように、No.1を目指して競い合う姿を見て、競技の面白さを楽しんでもらいたいと思っています。

~最後に東京2020大会に向けて意気込みを聞かせて下さい~

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金メダルを取るのが目標です。今までいろんな人に支えて頂いたので、その恩返しが「金メダルをとること」で出来ればいいなと思います。

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